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「……そんなの、気にしなくていいのに」
「勝手に、何とか無事に帰さなきゃと思ってたんだ。……これでやっと肩の荷が下りるけど」
ショルダーを肩にかけ、ベンチから立ち上がった彼に、私は言った。
「あの、……もし、また安眠したくなったら、こんな肩で良かったらいつでも貸しますから、連絡先交換しませんか?」
それは、また会いたいとかそういうことではなかったけれど。
このままこの人を日常に返したら、いつかポキッと折れてしまいそうに見えた。
彼は真っ直ぐ前を見て言った。
「そういうのは好きじゃない」
「……そうですか」
「『一応』の連絡先なんて使う予定が無いものは要らない。……使う予定があるなら交換してもいい」
ぷっ、と吹き出したら
「……ほら、もう乗るよ」
と背中を叩かれた。
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