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それから少し歩いた時、そこまでほとんど喋らなかった彼が
「あ」
と声をあげた。
「どうかしました?」
彼が指差した先には、久しぶりに見かけた気がする自販機があった。
「……これがあるだけで、こんなに明るいんですね」
彼は頷いて
「何か飲む?」
と財布を出した。
「いえ、大丈夫です」
「いいよ。宿行ってもこの時間だし、何でも買っといた方がいい。お茶でいい?」
ガチャン、と飲み物が落ちる音が夜道に大きく響く。
結局、お茶2本と缶コーヒー2本を買って、それは彼が全部自分のショルダーバッグに入れてくれた。
「あの、重いですよ」
「いいよ。俺が言い出したんだから」
この人、いろいろ考えながら歩いてるんだなぁと思うと、呑気に星なんて見上げて歩いていた自分が申し訳なくなる。
ふうっ、と息をついて彼はショルダーを肩に掛け直す。
「……だいぶ歩いたから、あと半分くらいかな」
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