135人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
6
翌朝。
パン、と何かに頭を叩かれると同時に、声がした。
「いくらなんでもそろそろ起きようか?お嬢さん。9時だよ」
頭だけ振り返ると、丸めた新聞を持った彼が居た。笑ってるけど、目は笑ってない。
「10時チェックアウトだから」
「……起きます」
浴衣から服に着替えながら声をかけた。
「何時から起きてたんですか?」
「4時40分」
「え?」
彼は背中を向けて新聞に目を向けたままいう。
「ほら、例の神社の。あれに行く人たちがうるさくてさ。君よく寝てるなと思ったよ」
「……すいません。……ていうか、よく先に帰らずに」
「無事に駅に帰って電車乗るまでが俺の仕事だから」
バサッ、と新聞を広げて畳む音がする。
「着替えたら、新聞と一緒に宿の人がお握り持って来てくれたから食べな。俺はもらったから」
最初のコメントを投稿しよう!