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 翌朝。  パン、と何かに頭を叩かれると同時に、声がした。 「いくらなんでもそろそろ起きようか?お嬢さん。9時だよ」  頭だけ振り返ると、丸めた新聞を持った彼が居た。笑ってるけど、目は笑ってない。 「10時チェックアウトだから」 「……起きます」  浴衣から服に着替えながら声をかけた。 「何時から起きてたんですか?」 「4時40分」 「え?」  彼は背中を向けて新聞に目を向けたままいう。 「ほら、例の神社の。あれに行く人たちがうるさくてさ。君よく寝てるなと思ったよ」 「……すいません。……ていうか、よく先に帰らずに」 「無事に駅に帰って電車乗るまでが俺の仕事だから」  バサッ、と新聞を広げて畳む音がする。 「着替えたら、新聞と一緒に宿の人がお握り持って来てくれたから食べな。俺はもらったから」
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