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 電車は走り出す。  私たちが眠りに落ちる前の、帰るべき日常に向かって。  でも――――。 「遠慮しないで寝たらいいじゃないですか。そんなに人も乗ってないし。ほとんど寝てないんでしょう?」 「いい。これ以上君に借り作りたくない」  彼は胸の前で腕組みして目を瞑る。 「……寝心地良かったんじゃないんですか?」  黙って、何も言わないと思ってたら、そのうち寝息が聞こえてきて、こつんと彼の頭が私の肩に乗った。  すう、と穏やかな寝息を立てて彼は眠っていた。 「……ゆっくり休んでください」   小さく声をかけると、気持ち、彼が微笑(わら)ったように見えた。    『終着駅の恋人』了
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