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化ける
女は、化粧でいくらでも化けられるのよ。
とは言え、まずは下地が大事。
顔を洗うのはぬるま湯よ。熱いお湯では、顔に皺が出来てしまうわ。
糠袋で、無闇にごしごし擦っては駄目。肌のきめが壊れてしまう。静かに回すように使うのよ。糠の汁がよく出て、きめが整ってつやつやになるわ。
これは『花の露』
いばらの花から、ほんのちょっぴりしか取れない貴重な露なんだって。
本当かしらねって言ったら、知り合いの蘭方医が作って見せてくれたわ。あたしの流し目一つで何でも言うことを聞くのよ。
ランビキっていうへんてこな器で作るんだけど、作っている間中、夢のようないい香りだったっけ。
もちろん、あんな助平じじいに流し目なんかしなくても、芝神明前の〔花露屋〕で買えるけれどね。
いい香りがするだけじゃなくて、肌のきめが細かくなって、つやも出るのよ。
白粉は、予めようく溶いておかなければいけないわ。
でなけりゃ粉を吹いたように浮いてしまって、伸びも乗りも悪いのよ。
はじめは顔に塗った白粉を、肌のきめに丁寧にすり込んで、少し置いたら糠で顔を洗って一旦落としてしまう。それからまた白粉をすり込んでは手拭いで拭き取ることを繰り返すと、色が白くなって化粧ののりも良くなるの。
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