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そんな表情は今まで見たことがなくて、俺は「杏子?」と名前を呼んでいた。
「れ……。いえ、水田課長。お世話になりました」
そう言いながら、俺の上から降りると杏子は、キュッと自分の腕を抱きしめて俯いた。
「どうしたって言うんだよ」
昔のように杏子の頬に手を伸ばそうとした俺だったが、それを杏子の手で払われ睨むような挑むような視線を向けられる。
今までこんなことはなかった俺は、動揺をしていたと思う。
初めて杏子が他人だということを認識した気がした。
「お願い、帰って」
その言葉に俺は「わかった」と一言返すだけだった。
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