【甘い罠に溺れたら】

最悪な再会

姿を見たわけでもないのに、ただ一言聞いただけの声でこんなになってしまう自分に嫌気がさす。

まだ恨んでるの？
もてあそばれたって？

そんな疑問を投げかけても、自分でも答えが出なかった。

そんな事を思っているうちに、いつの間にか会社の最寄りの駅が目の前で私はカバンをギュッと握りしめた。

駅から出ると、今にも降りそうなどんよりとした空に、また落ち込みそうになり、足早で会社へと急ぐ。

「おはようございます」
いつも通り挨拶をして手早く席に着くと、すこしいつもと違う空気をかんじて周りを見渡した。

「ねえ、なんかみんなそわそわしていない？どうしたの？」
私は言いながら、横の席の後輩の新藤満ちゃんを見た。

「あ、沙耶さん。おはようございます」
私とは真逆のかわいらしい笑顔を向けた満ちゃんは、少し興奮気味に言葉を続けた。