17213人が本棚に入れています
本棚に追加
「誓って私はなにもやましい事はありません。ただ優悟さんを思っているだけです」
静かに真っすぐに言い切った私に、お母様は小さくため息をついた。
「……お金なのよね?」
「はい?」
お金?何のこと?
「私にとって、優悟は大切な息子です。お金が必要なら差し上げます。だから、手を引いてください」
もう、なんのことかわからなくなった私は、お母様に問いかけようとしたところで、ドアが開いた。
「おばさま!」
そう言って入ってきた人を私はやっぱり……という思いで見た。
「日名子ちゃん」
「どうして私に言わずにこの人を呼んだの?」
少し慌てたように言った日名子さんの言葉で、日名子さんが呼び出すことを企てたのではない事がわかった。
「だって、日名子ちゃんのお話をきいて、いてもたってもいられなかったの。優悟をお金目当てで近づいてきたのなら、お金を差し上げれば……」
ああ、このお母様は生粋のお嬢様なのだろう、人を疑う事もしらず、ただ大切な物を守るために私を呼んだのだという事がわかった。
最初のコメントを投稿しよう!