15835人が本棚に入れています
本棚に追加
/304ページ
「おふくろは今からディナーをとか言っていたけど、沙耶もう疲れただろ?ほら、作ってもらってきた」
お皿に並ぶ美味しそうな、前菜やサンドイッチに私は目を奪われた。
「あと、足りないかもしれないから、俺の好きなこれね。あっ、ビール持ってくる」
そう言いながら優悟君は、慌ただしく部屋を出ていった。
そんないつも通りの優悟君に、私は心底安心するとようやくお腹がすいていることに気づいた。
すぐに優悟君はワインを持って戻って来ると、「缶ビールもないのかよ……」とブツブツと文句を言っていた。
「沙耶、この家ワインしかなかった」
そう言いながらコルクを慣れた様子で開ける優悟君に、私はくすくすと笑い声をあげる。
「ねえ、そのワインひょっとしてすごく高いものじゃないの?」
「え?あー、まあ、いいじゃん。迷惑料だよ」
そう言いながら優悟君はワイングラスに、きれいなルビー色の液体を注ぐと、私に手渡してくれた。
口に含むと濃厚な味が口いっぱいに広がり、私は大きく息を吐いた。
「おいしい……」
そんな私を見て、優悟君は「よかった」と自分もワインを口にした。
そしておもむろにグラスを置くと、ベッドの私のところにくると力強く抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!