試される愛

21/22
15828人が本棚に入れています
本棚に追加
/304ページ
「兄貴は俺と一回り以上違うから、兄貴に悪いことも教えてもらったし、親父は厳しくて決して贅沢をするような人間じゃなかった。大学もほとんど援助はなかったのは沙耶もしってるだろ?」 そう、あの頃の優悟君はどこかの御曹司なんて想像もできないぐらい、バイトもしていたし節約もしていた。 「だから、本当は周りが思うほど俺は特別な生活をしていなかったし、金も持ってなかった。でもこの家のせいでそうは思われなかったけどな」 少し苦笑して優悟君は言うと、私の顔を見た。 「だから、沙耶がただの俺を好きになってくれて、普通の生活をすることが本当に幸せで、楽しかった。あの頃言った普通の生活をしたいって言った言葉に嘘はない」 「うん」 その言葉は信用できる。あの頃は本当に楽しかったし、幸せだった。微笑んだ私に、優悟君も優しく微笑んでくれた。 「あの時以上に幸せになろうな」 その言葉が、優しく私の心に浸透していった。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!