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「ふーん」
さほど興味もなさそうに言った大ちゃんは、となりで鼻歌を歌っている。
この街は時間がゆったりと流れている気がして、大きく息を吸い込んだ。
「やっぱりこの街はいいね」
「そうだろ。都会の女にはなれなかったのか?」
「そんなことないよ!洗練されたのがわからないの?」
そんなくだらない事を話しているうちに、わが家が見えてきた。
昔ながらの平屋の家は、門扉だけがきれいになっていた。
「ありがとうね」
私は大ちゃんいお礼を言うと、軽トラの荷台から荷物をおろしてもらい、その新しくなった門扉に手をかけた。
「沙耶、お前いつまでいるの?」
「明日には帰るよ。月曜からまた仕事だもん」
その言葉に、大ちゃんはふーんとだけ言って、「じゃあ、またな」と軽トラの窓から手を振った。
そんなトラックを見送ると、私はゆっくりと実家へと足を踏み入れた。
「おかあさーん、ただいま」
「おかえりー」
和室の向こうの台所から聞こえた母の声に、ほっとして靴を脱いだ。
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