甘い罠を何度でも

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町役場勤務の父ももちろん家にいるだろう。 私の家は公務員の父と、専業主婦の母と、弟の4人家族だ。 ごく普通の家庭で、ごく普通に育ったと思う。 「お父さん、ただいま」 テレビを見ながらお茶を飲んでいたお父さんに、声をかけると「おかえり」と笑顔を向けてくれる。 「久しぶりの我が家ー!」 そう言って移動で少し疲れた私は、久しぶりの畳の感触にごろりと横になった。 「沙耶、なんですか。久しぶりに帰ってきたと思ったらいきなりごろごろして」 お母さんのお小言も懐かしくて、笑みが漏れる。 「いいじゃない。疲れてる娘を労ってよ。翔太は?」 弟の翔太の姿が見えず、私は周りをみた。 「翔太は、今日は大学の集まりがあるとかで出かけてる」 お父さんの返事に、「ふーん」とだけ答えて私はころころとしながら、家の外に見える海をみた。
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