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苦い記憶
柔らかな秋の陽射しが差し込むオフィスで、私は黙々とパソコンに向かっていた。
最近は毎日天気のいい日が続いていることもあり、忙しい日々の中にも私の気分も明るい。
「羽田さん!今日中にこのあいだの報告書出せる?」
そんな私は、後ろから聞こえた1年先輩の水田先輩の声にクルリと椅子を向けた。
「大丈夫です」
にこやかな優しい笑みを浮かべた水田先輩に、私はすこし緩んでいた表情をキリッと戻すと返事を返す。
そんないつも通りの私に、水田先輩は相変わらず優しい微笑みで何かを考えるような表情をしたように見えた。
「……じゃあ頼むな。何かわからないことあったらいつでも言って」
それだけを言うと、水田先輩は自分のデスクへと戻って行った。
「ねえ、沙耶」
小さくため息をついた私の隣の席で、同期入社の阿部友里の呼びかけに私はそちらを見た。
「なに?」
「もう少し笑顔をむければいいのに。水田先輩って社内でも競争率激しいんだよ」
友里の言葉に、私は友里が言いたい事が解り、肩をすくめて曖昧な笑顔を浮かべ、手早くパソコンのファイルを開いた。
「まったく沙耶は……」
肩をすくめて友里はそう言うと、自分の仕事を始めた。
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