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最悪な再会
あの声を聞いてから1週間が経った。
ようやくまたいつも通りの日常を送れるようになった自分にため息をついて、会社に向かう電車に乗り込む。
この1週間なんども彼の夢を見た。
いつも最後はあのシーン。
彼の一人暮らしの部屋のドアをいつも通りに開けると、驚いたように動きを止めた彼と、初めて見る少しうんざりしたような小さなため息。
『来るの早いよ』
その言葉を言った、上半身裸の彼の体の後ろから見えた、シャツだけを着た女の人の不敵な笑み。
そこで目が覚める。
もう忘れたつもりだったし、思い出すこともなかったこの光景を夢に見た。
少し込み合った電車の窓際からぼんやりと景色を眺めて、また心の中をあの男に占拠されそうで慌てて思考を戻した。
とっくに過去になってると思ったのに。
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