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文子への手紙
急啓
夜の訪れは、書斎の窓から覗くあの黒い月に急かされるように、早くなってきました。
闇夜でありながらも、燦然とそして黒々と輝くあの月を見る度に、私は貴女を思い起こすのです。
あの黒い月のように禍々しく美しい貴女。文子さん。
これは、私が貴女に宛てて書く最初で最後の手紙です。
そしてこの手紙は、恋文であり、告発状であり、また同時に貴女への哀願の書でもあるのです。
そう、私は看破したのです。貴女の周りで起こっている不自然な『死』の真相とともに貴女の正体までも。
今まで誰一人として辿り着くどころか近づく事さえ叶わなかった真相を、どうして一介の社会学者である私に看破することができたのか、貴女は不思議に思っているかもしれません。それを説明する為には、まずは時計の針を一ヶ月前のあの夜に戻さなければなりません。豪華絢爛な洋館で行われたパーティー。貴女との邂逅の夜。
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