禁断

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「いやよ、わたしはここにいたい。わたしはおじさんの傍から離れたくない」  わたしはあの時率直な、ありのままの感情を彼にぶつけた。 ただ必死で、傍にいたい、ここにいさせて、と懇願した。 そんなわたしに、暫く考えさせてくれと言った彼は数日後、信じられない条件を突き付けた。 「この先俺の傍にいたいのなら、それなりの対価を払え。その躰で」  あの時の彼が何を考えていたのかは分からない。 今だって彼の考えている事なんて分からない。 でも、彼にそんな条件を突き付けられてもわたしは引き下がらなかった。  彼の傍にいたかったから?  ううん、いなければいけない、と思っていた。 彼にはわたししかいないと思っていたから。  わたしは彼の前で自ら全ての衣服を脱ぎ、全裸となった。 「払います。だから、わたしをおじさんの傍に置いてください」  彼の顔が一瞬驚愕に染まったのをわたしは見た。 今にして思えばあの時彼が口にした条件には〝ハッタリ〟が含まれていたのかもしれない。 酷い条件を出せばわたしが離れて行くと思ったのかもしれない。 でもその〝条件〟を呑んだわたしに彼は驚愕の色を冷徹な表情の中に隠し、消した。
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