プロローグ

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 子供の頃、たいして絵心なんてないのに絵の具を混ぜて色の変化を楽しむ遊びにはまっていた時期があった。 たぶん、自分と同じ名前の色を見つけて嬉しくて、使ってみたくて始めた遊びだった。  自分の名前の色を軸に、絵の具の箱から取り出したチューブをパレットに絞り、夢中で混ぜ合わせた。 綺麗な色に変化した時は感動し、反対に、好きな色と混ぜたのになんとも言えない汚い色になってしまった時はがっかりした。  目に鮮やかな美しい色に変える色もあれば、澱み濁り、形容し難い色にしてしまう色もある。 一つの色が、混ざり合う色によって様々な変化を見せる。 わたしはあの頃、知らず知らずのうちに自らの生き方を占っていたのかもしれない。
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