帰路にて・・・・・・

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帰路にて・・・・・・

私が空腹に耐えながら頭をひねっていると、誰かに後ろから背中を叩かれた。 振り返ってみると、見知らぬ大人の女性が立っていた。 私と同年代のようだが、私は自分の歳を、過去の記憶と一緒に忘れてしまっているので具体的には分からない。 彼女は哀れむような微笑を浮かべている。 「覚えてる?」 口を開くなり、彼女はそう言った。 「いえ・・・・・・」 私が答えると、彼女はため息をついた。 「そうだよね。 さっきの肉まんのおばさんさ、私の母なんだけど、それも忘れちゃってるよね?」 「あぁ、そうだったんですか・・・・・・」 「とにかくね、ここにいても仕方ないから、帰りながら話そうか」 戸惑う私をよそに、彼女は一方的にどんどん話を進めていく。 そして私の肩を押しながら、自宅のある方向へと誘導するのだ。 まだ帰る気はないのだが、私の過去を知っているらしい、この人の話も気になるので付き合わざるを得ない。 「私ね、あなたとは小学生の頃からの友達なんだよ。 いつも、いじめっ子から助けてくれたよね」 「そうなんだ!」 町の人に嫌われている私が、そんな事をしていたとは意外である。 「だから、今は私が、あなたの世話を焼いてるってわけ。 それがあなたの助けになってるかどうかは、正直よく分からないけど・・・・・・ とにかく、放っておく訳にもいかなくて・・・・・・」 彼女はまた、深いため息をついた。 「あぁ、だけど、何から話せば良いんだろう。 毎日色々、言い方は変えてるんだけどね。 こうして毎日忘れちゃうって事は、私の伝え方が、やっぱり悪いのかな・・・・・・」 「・・・・・・どういう事?」 「そうだなぁ・・・・・・」 歩きながら、彼女は少し考えているようだった。 そして唐突に、 「とにかくさ、一度家に帰って、落ち着いてニュースをチェックしてね」
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