酩酊

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酩酊

府に落ちないまま家に戻ると、私は真っ直ぐ、寝室に入った。 目の前には大量の現金。 あれほど夢見た現金が所狭しとひしめいている! なのに!! 友人だと言う女性の言葉が気に引っかかって仕方ない。 意味不明な胸騒ぎが収まらない。 同時に空腹も限界だった為、料理を用意する元気もなく、結局は一番手軽な、かばんの中のドッグフードを食べる羽目になってしまった。 しかしなぜだろう。 慣れた手つきで、さして抵抗もなく食べられるのは・・・・・・ それからやっと、半分札束に埋もれたテレビを付けた。 丁度ニュースをやっていた。 キャスターが言う。 「この異例の、超ハイパーインフレの問題ですが・・・・・・」 何!? 私はその言葉の意味を知っているはずなのに、その瞬間には理解できなった。 そこにコメンテーターが口を添える。 「もう巷では、現金もクレジットも使われていませんよ! 紙幣が紙切れ同然です! 現金なんか、店では全く相手にもされませんよ! 僕はもうどうすれば・・・・・・」 そこへ、もう一人のコメンテーターも口を揃える。 「すっかり物々交換が主流になってしまっています。 皆、その日の食料を手に入れる事さえ困難な状況です。 これが一体いつまで続くんでしょうか!」 キャスターの面持ちも暗く、 「そうですね。このまま通貨が使われない状態が続くと、問題が長引くとして、政府は新通貨の発行を検討しているようですが・・・・・・」 この人達は、さっきから何を言っているのか。一体どういう事なのか!? 私の脳が理解しきる前に、キャスターがトドメのような次の打撃を私に与えた。 「今回の新通貨案では、これまでの一万円札、五千枚につき、新通貨の1円と交換するという案が有力視されているようですが、これではあまりにも・・・・・・」 グラリ・・・・・・ 話を最後まで聞く前に、全身の力が抜けた。 そしてそのまま、私は意識を失った。
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