4221人が本棚に入れています
本棚に追加
今からお守りをかけてたら、すぐに私にも好きな人できるかも!
せっかくだからもらった飴も食べておこっと。
巫女さんからもらった飴をパクっと口の中に入れる。
「なんだろ。この飴の味」
淡い黄緑色という飴の色から、青りんごかマスカットのような味を想像して口に入れたのだけれど、その飴は甘いようなしょっぱいような酸っぱいような苦いような、なんとも表現し難い不思議な味がした。
お守りを身につけ、飴を口に入れただけなのに、なぜかうれしくてテンションが上がってくる。
これで黄緑色の桜の花を見たら、今すぐにでも何かいいことが起こりそうな気分だ。
波瀾なんてあるわけないよね!
さっきまでおみくじの内容を見てショックを受けていたのに、そんなことはすっかり忘れ、私は御衣黄という桜が咲いている本殿の裏へウキウキしながら向かった。
(あの樹の奥かな?)
目の前に見える大きな樹に向かって歩いていく。
「えっ、ほんとに? わっ、これ桜じゃん? すっ、すごい…」
近づくにつれて、葉が生い茂った普通の樹木だと思っていた樹は、枝いっぱいに淡い黄緑色の花を咲かせていた。
初めて目にする桜の花の色に戸惑いながら、私はその樹の下まで行って桜の樹を見上げた。
「ほっ、ほんとに黄緑色の桜があるんだ。うそみたい…」
その黄緑色の桜は、薄紅色の桜とはまた違った清楚で気品漂う幻想的な桜の花だった。
しばらく樹を見上げたままその黄緑色の桜に心を奪われていると、どこからか緩やかな琴の音が聞こえ始めた。
視線を下に戻すと、桜の樹の向こうでその桜と同じような萌黄色の衣装を身にまとった男性が、美しい音色で琴を奏でている。
貴族のような姿をしたかなりイケメンの男性だ。
その横で艶やかな着物を着た可愛らしい女性がうっとりと微笑みながら琴の音色を聴いていた。
何だこれは?
ひらひらと黄緑色の桜の花びらが風に舞っている。
まるでドラマのワンシーンのようだ。
最初のコメントを投稿しよう!