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「全然大丈夫ですよ。ボクシム先生」
私はボクシム先生が心配しないように笑顔を向けて、首を左右に振った。
「王宮に着いたら門の前にいる警備兵に私からの使いということでソンヨルを呼んでもらったらよいだろう。念のため通行証は忘れずに持って行くのじゃよ」
「はーい、分かりました。ではソンヨルさんにお渡ししますね」
私はボクシム先生にそう答えると、ヨンウォン皇子への贈り物を受け取り、王宮へと向かった。
ボクシム先生には「大丈夫です」と答えたものの、王宮の前に到着すると私は急になんとも言えない緊張感に包まれた。
以前来た時と同じように、十数名の屈強な警備兵が無表情のまま右手に刀を携え、鋭い目つきをして立っている。
相変わらず威圧感があってできれば近寄りたくない。
私はふうーと大きく息を吐いて呼吸を整え、ひとりの警備兵に声をかけた。
「すみません。私はボクシム先生のお使いで参りました実桜と申します。護衛武官のソンヨルさんを呼んでいただけないでしょうか?」
警備兵は鋭い目つきで私を凝視したあと『ではここで待て』と告げ、門の中にいる兵士にソンヨルさんを呼んでくるように伝えた。
兵士がソンヨルさんを呼んできてくれている間、門の前の警備兵は視線だけを動かし、私の様子を常に監視している。
とにかく早く用事を済ませてこの場から立ち去りたいと思ってしまうほどの居心地の悪いその視線に、私はソンヨルさんを待っている間、警備兵に背中を向けて、ヨンウォン皇子への贈り物をギュッと握りしめていた。
しばらくしてソンヨルさんが王宮の外へとやってきた。
ソンヨルさんは私の姿を見つけると少し驚いた顔をして口を開いた。
「実桜どの。お久しぶりです。身体の方はもう大丈夫ですか?」
「お久しぶりです、ソンヨルさん。もうすっかり元気になりました。あの時はいろいろとありがとうございました」
「元気になられたのなら良かったです。それで今日はどうかされましたか?」
「お呼び立てしてすみません。今日はボクシム先生のお使いで、ヨンウォン皇子様へのお誕生日の贈り物をお届けにきました」
そう言って手に持っていた辛子色の布包を渡すと、ソンヨルさんは私が渡した書物を受け取り、納得したように爽やかな笑顔で微笑んだ。
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