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「実桜どの、ヨンウォン皇子様をお呼びして参りますので、少しこちらでお待ちいただけますか?」
ソンヨルさんがヨンウォン皇子の部屋の前で私に告げる。
「はい。わかりました」
「では申し訳ございませんがこちらをお返ししておきますね」
ソンヨルさんはそう言うと、一瞬いたずらっ子のような顔をしてニコッと微笑んだ。
そして手に持っていた皇子への贈り物を私に返却し、部屋の中へと入っていった。
(ソンヨルさん用事があるって言ってたけど、ここまで私を連れてきてくれるなら、ソンヨルさんがそのまま皇子に渡してくれるだけで良かったのにな)
(でもせっかくだし、皇子に直接おめでとうって言えるから、まあいっか…)
そんなことを思いながら私が贈り物の書物を抱えて待っていると、少し驚いた顔をした皇子がソンヨルさんと一緒に部屋から出てきた。
「実桜、どうしたのだ? 何かあったのか?」
皇子にそう聞かれ私が口を開きかけたとき、
「皇子様、申し訳ございません。私はこれから急ぎの用がありますのでここで失礼致します。後ほどミンジュンとまたお伺い致します」
と、ソンヨルさんが横からヨンウォン皇子にそう告げ、そのまま一礼して素早く立ち去って行った。
ヨンウォン皇子は一瞬何が起こったのか分からず、狐につままれたような顔をしながら「あ、ああ」とだけ言葉を発し、ソンヨルさんの後ろ姿を見つめていた。
そして、ふと我に返ったように再び私の方へ視線を向け、
「実桜、今日はどうしたのだ?」
と、不思議そうな顔をして尋ねた。
私は皇子の顔を見てニコッと笑顔を向け、頭を下げた。
「皇子様、今日はお誕生日なんですよね。おめでとうございます。今日はボクシム先生のお使いで皇子様に贈り物を届けに来ました」
そう言ってボクシム先生から託かった辛子色の布に包まれた書物を皇子に渡した。
皇子はそれを受け取るとさっそく布の結び目を解いた。
そして出てきた書物を目した途端、ぱぁーっと笑顔になり、とてもうれしそうな顔を見せた。
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