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「皇子様、何がそんなにおかしいんですかー?」
「いや、何もおかしくない」
「笑ってるじゃないですかー!」
「いや、笑ってない。私は笑っていない」
と言いながら、皇子は声を出して楽しそうに笑っている。
「もう、皇子様、ひどいです」
私はヨンウォン皇子を睨みながら頬を膨らませた。
「満足したのなら良いではないか。まあ、ゆっくりと茶でも飲め」
皇子はそう言ってお茶を差し出し、そのまま私の隣に座った。
私はヨンウォン皇子が差し出してくれたお茶をゴクリと飲み、皇子の笑いが落ち着いたところで、さっきからひとつ気になっていたことを皇子に尋ねた。
「ところで皇子様、今日はソンヨルさんやミンジュンさんたちと一緒に過ごされるのですか?」
「ああそうだが」
「お誕生日なのに王様や王妃様とはお過ごしにならないのですか?」
「父上はお忙しいし、王妃様は私には会いたくないだろうしな」
「どうしてですか? どうして王妃様は皇子様に会いたくないのですか?」
「私の存在が疎ましいだろうし、あまり近づくと兄上の地位を狙っていると思われるだろうしな。まあ、一応挨拶にはお伺いするつもりだが」
「あっ、違います。その王妃様じゃなくて、皇子様のお母様です。皇子様のお母様がお待ちになっているんじゃありませんか?」
すると皇子は私の質問の意味をやっと理解したような顔をして、
「ああ、私の母のことか…」
と、独り言のように呟いた。
そして少し哀しそうな、寂しそうな、なんともいえない表情を私に向けた。
「私の母は私が4歳のときに亡くなったのだ」
「えっ?」
一瞬、聞き間違いかと思ってしまうような言葉に、私は目を見開いて皇子の顔を見る。
あまりにもびっくりしすぎて、返す言葉を失ってしまう。
「すっ、すみません、皇子様。私、変なこと聞いて…。ほんとにすみません…」
慌てて謝る私にヨンウォン皇子はゆっくりと首を振り、柔らかい笑みを浮かべ、静かに口を開いた。
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