4335人が本棚に入れています
本棚に追加
その風に舞う桜の花びらの中で、美しい2人の存在はひときわ輝いていた。
絵になる美しさのあまり呆然と立ち尽くしていると、2人の会話が聞こえてきた。
「そなたの狙いはなんだ?」
「狙いなんてございません」
「皇族と婚姻関係を結び、権力や財力を不動のものとしようとしているのではないのか?」
「違います。私はただ皇子様をお慕いしているだけです」
その可愛らしい女性が悲しそうな顔をしてイケメンの男性に言う。
もしかしてドラマの撮影?
そう思って周りを見渡し、撮影カメラやスタッフらしき人を探してみたけれど、それらしき人は誰もいない。
だけど2人の会話はまだ続いていく。
「兄上には正室がいるからではないのか? 私がまだ独り身のうえ、私と婚姻すれば正室になれるがゆえに、私に近づいてくるのではないか?」
「違います。皇子様」
ニコリともしないその男性に冷たく突き放された女性は、目を潤ませながらイケメンの男性を見つめている。
今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。
そのまま女性の顔を見ていると、瞳いっぱいに溜まっていた涙がぽとりと零れ落ちた。
「涙を流せば信じてもらえると思っているのか? 残念だが泣いたところで私はそなたを信用などしていない。それに私は誰とも婚姻するつもりはない」
(なんなの、この人?)
(もう少し優しく言えばいいのに)
(女の人が可哀そうすぎるじゃん)
そんなことを思いながら、私は続きが気になり、ドラマのような2人の会話に吸い込まれるように見入っていた。
その時-。
最初のコメントを投稿しよう!