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私はソンヨルさんが言っていた言葉を思い出していた。
『皇子様は一見気難しそうに見えるかもしれませんが、とても心の温かい方です。それに友としても臣下としてもとても信頼できる方です。ヨンウォン皇子様だからこそ、私は護衛武官として仕えています』
その意味が、理由が、分かったような気がした。
気難しそうに見えるけど、とても心の温かい人。
本当にそうだ。
この人は不器用なだけで、とても心の温かい人なんだ。
小さなころからいろんな思いを抱えて生きてきたから、ひと一倍相手の気持ちに敏感で、自分でも気づかないうちに自然と相手の気持ちを優先してしまうんだ。
皇子として生まれ何不自由なく暮らしてきたはずなのに、学問も武芸も極めこのルックスまで備わっているというのに、全てを持っているようで心の中ではいつも孤独と戦っていたのかもしれない。
私はヨンウォン皇子の顔を覗き込むようにして、ニコッと笑顔を見せた。
そして明るい口調で皇子の名前を呼んだ。
「皇子様?」
私に呼ばれた皇子はゆっくりと視線を私の方へと向ける。
「皇子様のお母様、皇子様を産んで本当に幸せだったと思います。皇子様と一緒にいる時間は少なかったかもしれないけど、それでも皇子様が生まれてきてくれて、皇子様が笑ったり、歩いたり、話したりする姿が見れて、とってもうれしかったはずです。
きっと今は毎日空の上から皇子様の姿を見ていてくれてるんじゃないかな。そしてすっごく喜んでらっしゃると思います。自分が一緒にいなくても、こうして凛としてまっすぐに生きててくれて」
「…………」
「“優しい” とか “強い” だけじゃなくて、心の温かい『柔しさ』 と しなやかな『剛さ』 を持った人に育ってくれて、ありがとうって言ってらっしゃると思います」
「そう…だろうか…」
「うん。きっとそう。絶対にそうだと思います」
私は皇子に微笑みを向けたまま大きく頷いた。
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