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ヨンウォン皇子がゆっくりと私の身体から離れた。
そして、私の顔を見て少し驚いたような顔をして口を開いた。
「実桜、どうして泣いているのだ?」
私を心配しているような優しい声が耳に響く。
私は皇子の顔を見つめた。
どうしよう…。
皇子様の気持ちを考えてたら涙が出てきました…なんて絶対に言えるわけない。
同情して泣いてるって思われちゃうかな?
そんな風に思われたら皇子をもっと傷つけてしまう。
涙なんか見せちゃいけないのに…。
これ以上皇子に辛い思いをさせちゃいけないのに…。
いろんな思いが頭の中を駆け巡る。
皇子は視線を逸らすことなく、涙を流し続けている私の顔をずっと見つめている。
私は何も言わず無理やり笑顔を作った。
一生懸命笑顔を作っているにも関わらず、涙がどんどん溢れてくる。
何も言えず涙を流している私を皇子はじっと見つめてニッコリと微笑んだ。
それはとても柔らかくて、優しさに溢れる微笑みだった。
そして両手でふんわりと真綿を包むように私の頬に触れた。
皇子に触れられた頬が、皇子の手の温もり以上に熱を帯びはじめる。
ドキンー。
私の心臓が大きな音を立てて跳ねた。
皇子はそのまま一言も発することなくニッコリと微笑んだまま親指を動かして、優しく、とても優しく私の涙を拭ってくれた。
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