誕生日のプレゼント

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私は慌てて皇子から視線を逸らし、先ほど皇子が吹き消した桃のお饅頭を急いで手に取った。 そして素早く蝋燭を抜き、半分に割り、片方をヨンウォン皇子の前に差し出した。 「お、皇子様、この桃のお饅頭、食べてくださいね。皇子様の願いがこもったお饅頭ですから。私も皇子様の願いが叶うように、いただきまーす」 そう早口で言うと、私は慌ただしく桃のお饅頭をパクっと頬張った。 「実桜、まだ食べるのか?」 ヨンウォン皇子が目を丸くしながら私に尋ねる。 「そ、そうですよ。こうやってお祝いして炎を吹き消したケーキ…じゃなくてお饅頭は、その願いが叶うようにみんなでおいしく食べるんです。皇子様も早く食べてください。じゃないとせっかくの願いごとが叶いませんよ」 「あ、ああ」 皇子は私に促されるまま、手に持っていた桃饅頭を口に入れた。 「これはなかなか美味いな」 桃饅頭を口に入れた皇子の顔から笑みが零れる。 「そ、そうですよね。このお饅頭、すっごくおいしいですよね…」 私は恥ずかしさを抑えるように桃饅頭を称賛し、手に持っていた残りの桃饅頭をパクッと口に入れた。 「それにしても実桜、先ほどあれだけ食べたのにまあよく入るな」 再び目を丸くしながら吹き出す皇子に、私は黒目を動かしてじろっと睨んだ。 「さっき、皇子様に歌を歌ったからお腹が空いたんです!」 ヨンウォン皇子は「そうかそうか」と笑いながら、おいしそうに桃饅頭を口に運んでいた。 私は楽しそうに笑う皇子を見てどこかほっとしながら、とても幸せな気持ちになっていた。
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