愛する気持ち

1/18
前へ
/208ページ
次へ

愛する気持ち

秋も深まり、木々の葉が赤や黄色に鮮やかに色づき始め、朝夕はめっきり寒くなってきた。 この季節、この国では稲の収穫を祝い、来年の豊作を祈る祭りが国のいたるところで開催されていて、私たちがいるこのヨンジュでも華やかな祭りが開催されていた。 いつものようにミランさんと一緒に夕食の準備をしていると、珍しくミンジュンさんが台所までやってきた。 「ミランさん、明日お餅を買いに行きますがいくつ買ってきましょうか?」 「あっ、そうだわ。お餅ね!毎年悪いわね。今年は3個お願いするわ」 「わかりました。では今年は3個買ってきますね」 ミンジュンさんはそう言うと、私たちにニコッと笑顔を向けた。 (んっ? お餅を買いに行く?) 私はミランさんとミンジュンさんの顔を交互に見て、目をパチクリさせながら、 「お餅?」 と首を傾げて尋ねた。 するとミランさんが「あー、実桜は初めてだから知らなかったわねー」と言いながら、そのお餅について教えてくれた。 「今、都ではお祭りをしているでしょ。そのお祭りでは毎年収穫されたお米でお餅が作られるの。そしてそのお餅を食べると、病気することなく健康で一年過ごせると言われていてね。昔からお祭りのときにはそのお餅を食べるのが習わしなのよ」 「そうなんだ」 「あっ、そうだわ、実桜。ここのお祭り初めてでしょ。明日ミンジュンに連れて行ってもらうといいわ。このお祭りはね、たくさん提灯が飾られてあったり、花火が上がったりしてとっても楽しいわよ。ミンジュン、明日実桜を一緒に連れて行ってあげてくれないかしら?」 ミランさんは私の返事も聞かず、うきうきとした顔をしながらミンジュンさんにお願いをした。 優しいミンジュンさんは当然断ることもなく、 「分かりました、ミランさん。では実桜どの、明日一緒にお祭りに行きましょうか?」 と、いつも通りの爽やかな笑顔を私に向けた。 「は、はい…」 私はミランさんの手前断ることもできず、作り笑いを浮かべながら返事をしたのだけれど。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4071人が本棚に入れています
本棚に追加