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次の日。
空が茜色に染まり始めたころ、ボクシム先生の屋敷にミンジュンさんとヨンウォン皇子、ソユンさんが3人でやってきた。
「ソユンさん、お久しぶりです」
私はソユンさんに駆け寄って行き、声を掛けた。
久しぶりに会うソユンさんの姿に自然と頬が緩む。
「実桜さま、お久しぶりです。今日はお誘いいただきましてありがとうございます」
ソユンさんは少しはにかんだような笑顔を見せながら、丁寧に頭を下げた。
相変わらず控えめで、品があって所作が美しい。
ソユンさんと会うのは王宮でのお茶会の時以来でこうして話すのは今日で2回目だったけれど、私は普通に何の違和感もなく仲のいい友だちのように挨拶できたことにほっとしていた。
「急にお誘いしてすみません。ソユンさんと一緒にお祭りに行けたらなーと思って。こちらこそ来てくださってありがとうございます」
「いいえ。私もとてもうれしいです」
ソユンさんは左右に首を振りながらニコッと可愛らしい笑顔を向けた。
そんなソユンさんに、私は婚姻のお祝いを言おうと口を開きかけた…のだけれど。
声を出そうとした瞬間、なぜか胸の奥がまた針で刺されたようにチクリと痛む。
(どうしたんだろう。この胸の痛み…)
私は左手でそっと胸を押さえた。
ドクンドクンと心臓がリズミカルに動いている。
手のひらに伝わってくる心臓の動きからは、何の違和感も感じられない。
(どうして痛いんだろう?)
そのまま首を傾げて考えていると、ソユンさんが私の顔を覗き込み、
「実桜さま、今日はお化粧をされてらっしゃるのですね。髪の毛も結われていて、とても素敵ですね」
と、私のことをいきなり褒めてくれた。
「えっ?」
私は目を見開いてソユンさんの顔を見る。
実はミランさんが『実桜、お祭りに行くのならせっかくだから少しお洒落して行きましょ。私、娘がいたらこんな風にお化粧したり、髪の毛を結ったりしてみたかったのー』と、薄っすらとお化粧をしてくれて、髪の毛も可愛くアップに結ってくれたのだ。
「そっ、そうですか。ありがとうございます。お化粧なんて初めてだからすごく恥ずかしくて…」
私は顔を隠すように両手を頬にあて、照れ笑いを浮かべた。
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