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私たちが簪を髪に挿したりしながらあれこれと楽しそうに見ていると、
「実桜どのにはこの簪が似合いそうですよ」
後ろからミンジュンさんの声がして、急に手が伸びてきたかと思うと、その手は黄色の菜の花に白い蝶ががあしらわれた花簪を掴んだ。
「ミンジュンさん?」
びっくりして後ろを振り返る。
すると。
「実桜どの、ちょっと私が挿してみますね」
そう言ってミンジュンさんは私に微笑むと、片手で私の頭を包み込むように引き寄せて、髪の毛にその簪をスッと挿してくれた。
ミンジュンさんの何気ない行動にドキンと私の心臓が反応する。
「実桜さま、とってもお似合いです!」
ソユンさんが私の髪に挿された簪を見て、胸の前で両手を組み、ぱあっと華やかな笑顔を見せながら褒めてくれる。
「実桜どの、とてもよくお似合いです。うん、なんと可愛らしい」
ミンジュンさんまでドキッとするようなイケメンスマイルを向けて、私のことを褒めてくれた。
「あ、ありがとうございます。でもそんなに見つめられると恥ずかしいです」
私はうつむきながら両手で顔を隠した。
そんな私を見ながら、2人は 「似合う、可愛い」 と私のことをさらに褒めてくれた。
ヨンウォン皇子もこの簪が似合うって思ってくれるかな。
皇子の顔がふと頭をよぎる。
なんで私、今、皇子のこと考えたんだろう?
急にヨンウォン皇子の顔が頭の中に出てきたことに一瞬ドキッとしてしまう。
その皇子の顔を消し去るように、私は慌てて大きく首を振った。
(あっ、そういえば皇子…!)
私は近くに皇子がいないことに気づき、どこにいるのか顔を左右に振りながら周りを見渡した。
すると、隣のテーブルでひとり静かに簪を見ているヨンウォン皇子を見つけた。
わっ、私またソユンさんを独占してるじゃん…。
あー、だから怒ってあっちのテーブルにいるんだ。
やばい。どうしよう。
あまりにも楽しすぎて皇子のことをすっかり忘れていた私は、少し青ざめながら視線を下へと向けた。
視線を下に向けたまま、テーブルに並べられた簪を見ているふりをしてどうにか気持ちを落ち着かせる。
気持ちを落ち着かせながら、私は心の中で何度も自問自答を繰り返していた。
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