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「皇子様、どうしてこんなことをするのですか!」
「ミンジュンのところに行くのであろう」
「…………」
「やはりミンジュンのことが好きなのか?」
「違います」
「ではなぜミンジュンのところに行く?」
「…………」
「なぜミンジュンのところに行くのだ?」
私の目からポロリと涙が零れた。
「実桜、なぜ泣くのだ?」
「…………」
「実桜、どうしたのだ? なぜ泣いているのだ?」
皇子は少し苦しげな表情を浮かべながら私を見つめる。
「そんなに…、そんなにミンジュンのところに行きたいのか?」
「皇子様には…、ソユンさんがいらっしゃるじゃありませんか…」
そう言葉を発した途端、またポロリと涙が零れた。
「なに? ソユンどの?」
ヨンウォン皇子は一瞬驚いたような表情を浮かべ、眉を寄せて私に怪訝そうな顔を向けた。
「そうです。ソユンさんと、婚姻されるんですよね」
「何のことだ?」
「私はソユンさんを悲しませることはしたくありません」
「実桜、何を言っているのだ?」
「だからソユンさんと一緒にいてあげてください。私が皇子様のそばに長くいるとソユンさんが嫌な思いをされます。私はあちらに戻りますから」
「まっ、待て。実桜…」
私は皇子が掴んでいた手を振りはらい、皇子の方を振り返ることなく、ソユンさんとミンジュンさんのいるテーブルへと戻っていった。
ソユンさんたちがいるテーブルへと戻った私は、
「ソユンさん、あっちにも可愛い簪が置いてありますので行ってみましょう」
と言ってソユンさんの手を掴んだ。
ソユンさんは少し驚いたように目を見開いたあと「はい」と頷いて口元を緩ませた。
それから私はミンジュンさんの方に視線を移し、
「ミンジュンさん、申し訳ないのですがちょっとだけここで待っていてくださいね」
と告げてソユンさんをヨンウォン皇子のところへと連れて行った。
ヨンウォン皇子が無言のまま、私とソユンさんの顔を交互に見る。
「皇子様、ソユンさんに似合う簪、ちゃんと選んであげてくださいね」
私はそう言い残すと無理やり笑顔を作って皇子に微笑み、ソユンさんをその場に残したままミンジュンさんの元へと戻っていった。
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