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心臓がドキドキドキドキと音を立てて震えている。
力を抜いてしまうと、今すぐにでもその場に崩れてしまいそうだ。
私は足の指にギュッと力を入れ、両手の拳を握った。
そのままなんとか平静を装い、なるべく口角を上げて笑顔を作った。
そして、動揺を悟られないように注意しながらその笑顔をミンジュンさんに向けた。
「ミンジュンさん、お待たせしました。ヨンウォン皇子様がこっちに来てくれないので、ソユンさんにお願いすることにしました」
いつもと変わらない調子でそう言ってニコッと微笑む。
(きっと私、ちゃんと笑えてるはず…)
そう思いながら顔が引きつるのを必死で抑え、どうにか耐える。
すると、ミンジュンさんは、
「そうですか。ヨンウォンもこちらで一緒に見ればよいものを」
と言ってヨンウォン皇子の方にチラッと視線動かしたあと、私にニッコリと優しい笑みを向けた。
(あー、もうだめ。笑顔を作るのが限界…)
私はミンジュンさんの優しい眼差しを遮るように、簪が置いてあるテーブルへと視線を移した。
(多分、大丈夫。ミンジュンさんは気づいてないはず…)
ミンジュンさんの視界から外れたことで、私は少し安心して小さく息を吐いた。
顔の筋肉がこのうえなく緊張している。
その緊張とともに、胸の奥が何かに突き刺されたようにとてつもなく痛くなってきた。
心が、身体が、ギュッ、ギュッと締めつけられる。
呼吸の仕方を忘れてしまうほど息が苦しくなる。
昨日から胸が痛かった理由も。
さっき涙が零れた理由も。
全部これが原因だったんだ。
あの時、皇子に言った時、気づいてしまった。
「皇子様にはソユンさんが…」と口に出した瞬間。
私、皇子のことが、ヨンウォン皇子のことが、好きなんだ…と。
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