愛する気持ち

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「あっ、この簪…」 私はソユンさんの髪の毛に挿してある桔梗の花の簪を指さした。 「そうなんです。先ほど実桜さまに選んでいただいた簪なので購入しようと思いましたら、ヨンウォン皇子様が買ってくださいました」 ソユンさんは頬を赤く染めながら、恥ずかしそうに口を開いた。 ソユンさんの顔はとても幸せに満ちた顔をしていた。 「ソユンさんにすごくお似合いです」 ソユンさんにそう言いながら、胸が、心が、すごく、すごく苦しい。 「実桜さまもその簪を買われたのですか?」 ソユンさんが私の髪の毛に挿してある菜の花の簪に視線を向けた。 「あっ、そうなんです。ミンジュンさんが買ってくださいました」 私は泣きそうになりながら、ぎこちない笑顔を向けて答えた。 「お2人ともとてもよくお似合いですよ」 横からミンジュンさんが優しい顔をして私たちのことを褒めてくれる。 するとヨンウォン皇子が私たちの話を遮るように、 「ではそろそろ帰るとするか」 と、無表情のままそう告げた。 私はソユンさんと並んで歩きながら、先ほどの花火の中でどれが気に入ったかとか、あの花火がきれいだったというようなたわいのない話をして帰っていた。 ちゃんと普通に話せていると、笑えているとは思うけれど、早く屋敷へ戻ってひとりになりたかった。 (帰るまであともう少し…。あともう少し…) 心の中で自分に向けて何度も呟く。 その時。 「きゃあー」 突然、少し先の方から女性の悲鳴が聞こえてきた。 歩いていた人たちが悲鳴が聞こえた方からどんどん逃げ去っている。 ヨンウォン皇子とミンジュンさんが、私たちをガードするように真横に移動してきた。 何が起こっているのかと様子を窺うと、小さな女の子とその母親とみられる女性が、たちの悪そうな男たちに絡まれていた。 どうやら小さな女の子がその男たちにぶつかったようだ。 男たちは6、7人でその親子を取り囲み、薄気味悪い笑みを浮かべながら睨みをきかせ、威圧していた。
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