愛しいひと

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5日目の朝。 医官長が言っていた最終期限の日だ。 だが実桜には何の変化もなく、目を覚ましそうになかった。 ヨンウォンは実桜の手を握って優しく擦ったあと、いつものように執務部屋へと向かい、できるだけ早く業務をこなした。 そして業務が終わるとすぐに自分の部屋へと戻ってきた。 実桜が寝ている横へと座り、慈しむようにふんわりと手を握る。 実桜の体温を感じながら、そのまま優しく擦り始めた。 ヨンウォンが実桜の手を握って擦るのは毎日の日課のようになっていた。 「実桜、今日が医官長の言う期限の日なのだ。一度でよい、一度でよいから目を開けてくれないか…。実桜…」 何度も何度も手を擦りながら実桜に話しかける。 実桜はこの部屋に運んできたときと全く同じ状態で、目を閉じたままヨンウォンの問いかけに返事をすることはなかった。 「実桜…」 ヨンウォンは吐息を漏らすように実桜の名前を呼んだ。 その時。 「んっ?」 実桜の人差し指がピクッと動いたような気がした。 「実桜、実桜…!」 ヨンウォンが一瞬大きく目を見開き、必死で何度も実桜に呼びかける。 だが実桜は全く動くこともなく、目を開くこともなかった。 「気のせいか…」 ヨンウォンは肩を落としながら小さく息を吐いた。 「実桜…。もうそなたの笑顔は見ることができないのか…。もう一度…、もう一度私に笑顔を向けてくれないか。実桜…」 するとー。 ピクッー。 ヨンウォンの声に反応したかのように、やはり実桜の人差し指が動いたような気がした。 (間違いない。実桜の指が動いている!) 「内官、内官はいるか!どこにいる!」 ヨンウォンが部屋の外に向けて大声で叫んだ。
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