愛しいひと

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「皇子様、おそらく明日の朝までには目を覚まされると思います。目を覚まされましたらまたすぐにお呼びください」 「わかった。実桜が目を覚ましたらすぐに内官を送る」 「かしこまりました。ではこれで失礼致します」 医官長は頭を下げ、部屋から出て行った。 医官長が部屋から出て行ったあと、ヨンウォンは実桜のそばへと移動し、腰を下ろした。 再び実桜の手を柔らかく握る。 「実桜…、実桜…」 実桜に話かけるように名前を呼んでみるが、実桜は目を閉じたまま何も反応はない。 だが、不安で仕方がなかった先ほどまでとは違い、医官長からの『危険な状態は回避した、もう大丈夫だ』という言葉を聞き、ヨンウォンの重苦しかった心が少しずつ軽くなり始めていた。 実桜が目を覚ます。 もう一度、実桜の笑顔が見れる。 そう思うと、実桜がヨンウォンの呼びかけに返事をしなくても、心の平安が得られるとともに自然と笑みがこぼれてくる。 「実桜、よく頑張ったな…」 ヨンウォンはそう言って実桜の髪をそっと撫でた。
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