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「実桜…、実桜…、気がついたか?」
「…………」
「実桜、私がわかるか?」
目の前にヨンウォン皇子の顔が見える。
「…………。皇子…様…」
「そうだ。私だ。わかるか?」
私は頷く代わりにほんの少し唇を動かした。
「よかった…。本当によかった…、実桜…」
皇子は安堵の息を漏らしながら、両手でふんわりと挟むように私の頬に触れ、とっても優しい笑みを浮かべた。
そして部屋の扉の方へ振り返り、
「内官、内官はいるか? すぐに医官長を呼んでくれ。急げ」
と、大きな声で叫んだ。
扉の外で「かしこまりました」という内官の声が聞こえる。
皇子はその声を確認したあと、もう一度私の方へと振り返った。
そのまま私の顔を見つめ、にっこりと微笑む。
「皇子…様…、ここは…、ここはどこ…ですか…?」
「ここは私の部屋だ」
「皇子様の…部屋…?」
私は聞き返すように皇子に尋ねた。
「そうだ。私の部屋だ。実桜、何も覚えてないのか?」
ヨンウォン皇子は何度も頷きながら今度は逆に私に問いかける。
「はい…」
「実桜、そなたは祭りの帰りに刀で切られたのだ」
「…………」
「私を助けようとして男たちの前に飛び出してきたのだ。覚えてないか?」
皇子にそう言われ、私はヨンウォン皇子が男に刀で切られそうになり、それを制止しようと飛び出していったことを思い出した。
「………。あ…、そう…でした…」
「少し思い出したか?」
「はい…。皇子様は…お怪我は…、ございませんでしたか…?」
「実桜が助けてくれたゆえ、私はなんともない。それよりどうしてあのようなことをしたのだ? どうしてあんな危険なことを…」
「…………」
「実桜、そなたは5日も目を覚まさなかったのだぞ」
「5日…? 」
「そうだ。5日もだ。私がどれほど心配したことか。わかっているのか?」
「皇子様が…、お怪我がないのでしたら…よかったです…」
私はそう告げると皇子に向けて薄っすらと微笑み、そのまま静かに目を閉じた。
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