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私が刀で刺されてから、かれこれ2週間が過ぎようとしていた。
私は目が覚めてからもボクシム先生の屋敷に帰されることはなく、ヨンウォン皇子の部屋で医官長の診察を受けながら過ごしていた。
独身の、それも皇子の部屋で、女性の私が過ごすことは王宮でかなり問題になっていたみたいだけれど、皇子は誰の意見も受け入れず、何を言われても断固として私を部屋から出そうとはしなかった。
皇子は毎日の業務が終わるとすぐに部屋に戻ってきて私の様子を確認し、医女たちが煎じた湯薬を飲ませてくれたり、おいしいお菓子を持ってきてくれたりと、とても親切に私を気遣ってくれた。
そのおかげで私は随分と元気になってきていた。
だけど。
元気になるにつれていろいろなことが思い出され、あのお祭りでのできごとが鮮明に蘇ってきた。
皇子とソユンさんが並んで簪を見ている姿。
皇子のことを好きだと気づいた私。
皇子はソユンさんと婚姻すると知り、涙を零してしまったこと。
2人が一緒にいる姿を見るのが辛くて、花火を見ながら心が悲鳴をあげていたこと。
そして、皇子がごろつきたちに刀で切られそうになったこと。
あのときの情景がフラッシュバックのように次々と浮かびあがってくる。
私はその浮かび上がった画像を消去するように、ぎゅっと目を瞑った。
(皇子は私が5日も目覚めなかったって言ってたけど、あのまま目を覚まさなければまたこんな風に心が痛くならなかったのに…)
(パパとママが夢の中で私を連れて帰ってくれようとしたけど、あのままママの手を掴んでいたらもしかして日本に帰れてたのかな…)
「もう帰れないのかな…」
私は小さく息を漏らした。
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