愛しいひと

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「皇子様のせいではありません…。それに身体が傷ついたから日本に帰りたいのではありません…」 皇子のとても辛そうな顔に、私の目からぽろりと涙が零れた。 皇子は目を細め、微笑むように口元を少しあげると、目から零れ落ちた涙を親指で優しく拭ってくれた。 そして、そのまま私をふんわりとくるむように抱きしめた。 「実桜、本当にすまない。さぞかし痛かったであろう。こんな刀傷を身体に残させてしまうなんて…」 皇子が私を抱きしめながら耳元で囁く。 「皇子様、本当に大丈夫ですから。気にしないでください」 私は皇子が気にしないようになるべく明るく振舞った。 皇子の前で明るく振舞うものの、心の奥の痛みがどんどん激しさを増していく。 これ以上皇子に優しくされると離れたくなくなりそうで。 これ以上皇子と一緒にいると離れられなくなりそうで。 そうなってしまう自分が怖い。 現に、心が痛みで悲鳴をあげているというのに、皇子に抱きしめられるのを幸せに感じている私がいる。 もっと抱きしめてほしい…。 このまま時間が止まってしまえばいいのに…。 皇子とずっと一緒にいたい…。 (ソユンさん、ごめんなさい。あと少し、あと少しだけ、皇子様とこのままでいさせてください) (皇子様、私はあなたが好きです) 私は心の中でそう呟きながら、皇子の腕の温もりと抱きしめられる感覚を忘れないように、しっかりと心と身体に刻みつけた。
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