愛しいひと

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「よく似合っておる。あのミンジュンが贈った黄色の花の簪よりよく似合っておるぞ」 皇子はニヤリといたずらっ子のような笑顔を浮かべながら満足そうに頷いた。 「あ、ありがとうございます…」 皇子に見つめられ、どんな顔をしていいのかわからない。 そんな私に皇子は、 「それにしてもこの簪の花だが、実桜が私にくれたお守りの桜の花とよく似ておるな」 と、私の髪に挿された簪に視線を向けながら、お守りの桜の花と見比べている。 私は視線を皇子が手にしている桜のお守りに移した。 「似てますよね。私も最初この簪を見たときにそう思いました」 「何の花であろう? 桜の花のように見えるのだが…」 「皇子様の知らない花なのですか?」 「ああ、これが黄桜と呼ばれるものなのか、それとも実桜が申していた御衣黄という桜なのか…」 「黄桜?」 「ああ、黄桜という黄色い色の桜があると聞いたことがあるのだが本当に存在するのかどうか。私はまだ見たことなくてな」 「そうですか」 私は皇子の話に首をゆっくりと縦に動かしながら頷いた。 すると、頭が揺れたせいか、皇子が先ほど挿してくれた簪がポトリと落ちた。 「あっ…」 私はそれを取ると髪の毛をねじって纏め、今度は簪が落ちないようにそのねじって纏めた部分に絡めるようにして挿した。 皇子の方に視線を戻すと、皇子は真剣な表情で私の顔をじっと見つめている。 そしていきなり私の手を掴み、グイッと自分の方へ引き寄せた。 そのまま私を自分の腕の中に入れ、ギュッと抱きしめる。 「お、皇子様?」 戸惑いながら呼びかける私に、皇子のかすれた声が耳に届いた。
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