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「先ほども似合っていたが髪をあげるとまた一段と似合っておるな」
耳元で囁かれる声が心なしか震えているような気がする。
そう感じた時だった。
「実桜…。そなたのことが好きだ…」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
頭でその言葉を理解する前に、胸の奥がその言葉に反応するようにキューンと響いた。
(そなたのことが好き?)
(私のこと?)
皇子から聞こえた言葉の意味を理解できた途端、身体の奥に押し込まれていた熱い想いが溢れだすように流れ始める。
これは夢なんだろうか?
それとも現実なのだろうか?
驚きと戸惑いとうれしさと幸せが身体の中を駆け巡る。
私は皇子の腕の中に身体を預けたまま、そっと皇子の背中に手を回した。
皇子は一瞬ピクンと反応すると、それに応えるようにさらに力を強めて私の身体をギュッと抱きしめた。
そして、再び耳元で囁いた。
「実桜、愛している…」
皇子はギュッと抱きしめたあとゆっくりと私から身体を離すと、片手を私の腰に回し、もう片方の手を私の頬に添えた。
妖艶な切れ長の瞳で私をじっと見つめる。
その視線に私の身体がビクンと反応した。
心臓がドクンドクンと音を立てながら加速し始める。
皇子はそのままゆっくりと顔を近づけてきた。
唇が重なる。
それはとても温かくて柔らかい唇だった。
優しく、優しく触れる皇子の唇。
皇子に触れられた唇が、頬が、腰が、熱を帯びて、電気が走ったように私の身体がまたビクンと反応する。
頭の中が真っ白になり、身体から力が抜けてよろけてしまいそうになる私を、皇子は腰に回した手と頬に触れた手でしっかりと支え、重ねた唇を決して離そうとはしなかった。
私は皇子の衣装をギュッと握りしめながら、皇子からの優しい口づけを受け入れた。
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