王妃の予言

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王妃の予言

ボクシムは薬草を調合しながらひとり考えごとをしていた。 実桜が祭りの夜に刀で切られてから王宮に運ばれ、危険な状態から目を覚ましたという連絡があってから、かれこれひと月になる。 実桜の容態はソンヨルから事細かに報告を受けており、実桜が日に日に元気になっているということは承知していた。 だが、ヨンウォン皇子は実桜がほぼ元気になったにも関わらず、未だに自分の部屋から実桜をこの屋敷へ帰すことはせず、自分のそばに置き、療養をさせている。 そんなヨンウォン皇子の行動に、王宮では官僚たちからいろいろな意見が出始めてきているということだった。 実桜が面倒なことに巻き込まれる前に、ボクシムはそろそろ実桜を迎えに行こうと考えていた。 そんな中、とても驚くべき客がボクシムの屋敷を訪ねてきた。 「これはこれは王様、このようなところに…。いったいどうされたのでございましょうか?」 それは、シンファの国王、ヒョンジョンの来訪だった。 「ボクシム、久しぶりだな。元気にしておったか?」 突然現れたヒョンジョン国王にとても驚きながら応対するボクシムに対して、ヒョンジョンはにこやかに笑いながら挨拶をした。 どうやら護衛の従事官を1人だけ連れて、お忍びでここまで来たようだった。 「王様、久しぶりも何も…、なぜこのようなところに…」 「いや、突然申し訳ない。王宮へ参内するようにそなたへ連絡を入れようと思ったのだが、王宮だと多くの目があるのでな。今日は忍びで来たのだ。悪いがボクシム、少しよいか?」 ヒョンジョンはそう告げると、真剣な表情をボクシムに向けた。 「かしこまりました。では王様、どうぞお部屋の方へお入りください」 ボクシムはそう言ってヒョンジョンを屋敷の中へと招き入れた。 ミランに酒と食事の用意をさせ、部屋の中にセッティングをさせると、ヒョンジョンとともにテーブルの前へと腰を下ろした。
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