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「王様、お注ぎ致します」
そう言ってボクシムがテーブルの上に置かれた酒瓶を持つと、ヒョンジョンはその酒瓶を片手で制しながら口を開いた。
「いや。酒の前にひとつ話をしても良いか? ボクシム?」
「かしこまりました。どのような話でございましょうか?」
ボクシムは手に持っていた酒瓶をテーブルに置き、ヒョンジョンに視線を向けた。
「実は、ヨンウォンのことなのだ」
「ヨンウォン皇子様のことでございますか?」
「ああ。ヨンウォンが今、王宮の中でひとりの女人を療養させているのは知っておるな?」
「はい。存じております。その女人は私どもと一緒に生活をしております実桜と申す女人でございます」
「ああそうだ。調べさせたらボクシムの遠戚だと聞いた。それでボクシムに頼みがあってきたのだ」
「王様、頼みとは?」
「王宮ではヨンウォンの行動にいろいろと意見が出ておってな。独り身の皇子が若い女人を部屋に入れて療養させておるとな。今のところ、ヨンウォンの命を助け、怪我をした女人ということで黙らせてはいるが、それもそろそろ限界に近づいてきておる。王宮の風紀が乱れる前に、皇子を婚姻させろと官僚たちから多くの声が上がってきはじめたのだ」
ヒョンジョンはそこで一旦ふぅーと息を吐いた。
「ただ、当のヨンウォンは婚姻などしないと昔から頑なに言っておってな。どれだけ婚姻の話がきても決して首を縦に振らなかった。自分が婚姻すれば王宮内に争いが起こるとヨンウォンなりに考えてのことだったのだろう。そんな中、先日ナヨン王妃がヨンウォンと自分の親戚の娘との縁談を企てて、水面下で話を進めていたようだ。そのことについてヨンウォンが初めて私に直訴をしてきた。豪族の娘との婚姻は王宮内で争いが起こる可能性があるゆえ絶対にしない、自分が婚姻したいのは豪族ではない娘、ボクシムの遠戚である女人と婚姻したいとな」
「そ、それは…。さようでございますか」
ボクシムは驚きながら口を開いた。
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