王妃の予言

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あれは18年前の初冬に入ったころのことだった。 ヨンウォン皇子の母であるファヨン王妃からボクシムの元へ、王宮に参内してほしいとの連絡が入った。 ファヨン王妃から直々に連絡があるとはなんとも珍しい。 ボクシムはどんな用件で呼ばれたのか全く見当がつかないまま、王宮へと向かった。 ヒョンジョン国王の第二王妃として王宮に入ったファヨン王妃は、とても聡明で思いやりに溢れた美しい王妃だった。 王宮の文書を管理し、王の諮問に応じる機関に従事する高官の娘であり、その父親はヒョンジョンからの信頼がとても厚い重臣だった。 ヨンウォン皇子が書物を好きなのも、このファヨン王妃の父親の血を譲り受けているからなのだろう。 そのファヨン王妃の父親も、ファヨン王妃が亡くなった次の年に亡くなり、ヨンウォン皇子の身内はほぼ誰もいなくなってしまっていた。 ボクシムがファヨン王妃の居住する建物を訪ねると、すぐに侍女が出てきて部屋の中へと案内してくれた。 「王妃様、ご無沙汰しております」 ボクシムが丁寧に頭を下げると、ファヨン王妃は美しい笑みを浮かべながらボクシムにお礼を言った。 「ボクシム先生、お呼びだてして申し訳ございません。王宮まで参内してくださいましてありがとうございます。今日はお願いがありましてご連絡をさせていただきました」 「王妃様、何でございましょうか?」 「実は、ヨンウォンのことでございます」 「ヨンウォン皇子様のこと?」 全く予期していなかった言葉に、ボクシムはきょとんとしながら窺うようにファヨン王妃の顔を見た。 「はい。このようなことをお願いできるのはボクシム先生しか思い浮かばず、無理を承知でお呼びだてしてしまいました。ボクシム先生にヨンウォンの力になっていただきたいのです」 「あ、あの…、ヨンウォン皇子様の力になるとは?」 「はい。今から私が申し上げることは、全て真実でございます。これから先、ヨンウォンだけの力ではどうすることもできず、ボクシム先生の力が必要になるときがございます。その時にヨンウォンを助けていただきたいのです」 ファヨン王妃はそう言うと目を細めて微笑んだ。 「助けると申しますと?」 そう尋ねるボクシムに、ファヨン王妃はなんとも美しい笑みを向けて頷いたあと、静かに話を始めた。
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