王妃の予言

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「ボクシム先生、どうぞお掛けください」 ヨンウォン皇子はボクシムに部屋の中央に置かれた応接机の椅子に腰かけるように促し、自分も目の前の椅子に腰を下ろした。 そして、ボクシムが話を始める前にヨンウォン皇子の方が先に口を開いた。 「ボクシム先生、またしても実桜の身体を傷つけることになってしまいまして本当に申し訳ございませんでした。私のせいで二度も実桜を辛い目に遭わせてしまいました。本当に…、本当になんとお詫びをしてよいのか…。申し訳ございません」 ヨンウォン皇子はテーブルに額がつきそうになるほどに深く頭を下げた。 「皇子様、どうか頭をお上げください。前回もそうですが、今回のことも決して皇子様のせいではございません。結果的に実桜の身体が傷つくことになってしまいましたが、これは仕方のないことでございます。皇子様の命も実桜の命も助かったのですから、良かったのです。そのようにお気になさらないでください」 「ボクシム先生…」 ヨンウォン皇子は沈痛な表情を浮かべてボクシムに視線を向けた。 「ところで皇子様、今日は実桜を屋敷に連れて帰ろうと思いお伺いさせていただきました」 「えっ、実桜をですか?」 ヨンウォン皇子はボクシムの言葉を聞いた途端、当惑したように顔を曇らせた。 「皇子様、現在王宮の中で官僚たちから様々な意見が出始めているのはご存知でいらっしゃいますね?」 「…………」 「独り身の皇子様が若い女人を部屋に入れて療養させていると」 「…………」 「このままでは王宮の風紀が乱れてしまうため、官僚たちから皇子様を早く名家の娘と婚姻させねばとの意見が多くあがっているようです」 ヨンウォン皇子はボクシムを見つめたまま、何も言わず黙って聞いている。 「皇子様のためにも、そして実桜がこのことに巻き込まれないためにも、実桜を屋敷に連れて帰ろうと思っております」 「…………」 皇子が一言も言葉を発しないので、ボクシムは言うべきかどうか迷っていたが、覚悟を決めて口を開いた。 「皇子様、実は先日、王様が私の屋敷にお忍びで来られたのです」 「えっ、父上が?」 ヨンウォン皇子は驚いたように目を見開いた。
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