王妃の予言

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「はい。王様もこのことをかなり心配されておいででした」 ボクシムは皇子に理解を促すように、穏やかな笑みを浮かべて頷いた。 「そうですか。父上が…」 皇子はそう言って視線を下へと落とした。 「皇子様、皇子様のお気持ちはよくわかっているつもりでございます。実桜の身体を二度も傷つけてしまったことに責任を重く感じ、実桜の身体が完全に治るまで療養させようとしていらっしゃることは十分に理解しております。そのお気持ちはとても有難く思っております。ですがこのままでは官僚たちの意見を抑えることができず、王様のお立場も危うくなります。それにまたしても実桜を傷つけてしまうかもしれません。王宮の風紀を乱さないためにも、私は実桜を屋敷へ連れて帰ろうと思っております」 皇子は視線を落としたまましばらく沈黙したあと、再びボクシムに視線を戻し、静かに口を開いた。 「ボクシム先生、分かりました。実桜は私の部屋にいますのでご案内致します」 ヨンウォン皇子は覚悟を決めたように椅子から立ち上がった。 皇子の部屋に行くと、ヨンウォン皇子と一緒に部屋に入ってきたボクシムの顔を見て、実桜がびっくりしたように目を丸くした。 「あっ、ボクシム先生…」 「実桜、体調はどうかな?」 ボクシムは実桜の顔を見て目を細め、にっこりと微笑みながら尋ねた。 「いろいろとご心配をお掛けしましてすみません。もうすっかり良くなりました」 「そうか。それなら安心した。実はミランがかなり心配しておってな。実桜がいないととても寂しそうなのじゃ」 「本当にすみません。ボクシム先生やミランさんのお手伝いもしなきゃいけないのに」 「そんなことは良いのじゃが、そろそろ屋敷に戻ってこないかと思ってな。今日は実桜を迎えに来たのじゃよ」 ボクシムの言葉を聞いた実桜は一瞬悲しそうな顔をしたように見えた。 だが、すぐにボクシムに笑顔を向け、 「そうですね。私もお屋敷に戻ろうと思っていました。すぐに支度しますね」 と言って大きく頷いた。
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