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繋がる証
屋敷に戻るとミランさんが涙を流しながら私を出迎えてくれた。
「実桜、やっと戻ってきたのね。もうどれだけ心配したか…。実桜、無事でよかった…」
「ミランさん…」
私はミランさんの顔を見た途端、安心して涙が溢れ、そのまま抱きついた。
「ほんとに実桜は心配ばかりかけて。刀で切られたと聞いた時は居ても立っても居られなくて、生きた心地もしなかったわ…」
「ミランさん。ごめんなさい…」
「よかった。ほんとによかった。私たちの元に戻ってきてくれて」
私たちが抱き合って号泣していると、横からボクシム先生が、
「ミラン、お茶の用意でもして、部屋の中でゆっくり実桜と話をしてはどうだ?」
と、優しく微笑んだ。
私はミランさんと一緒にお茶の用意をして、それをボクシム先生が待つ部屋に運んだ。
ミランさんはお茶をテーブルの上に置きながら、
「実桜、これからはずっとここに居なさいね。こんどあんな目にあったら私はもう生きていられないわ。刀で切られた傷は大丈夫? まだ痛いでしょう? 他に身体で痛いところはあるの? まだ完全に治ったわけじゃないんだから、治療もきちんとしないとね」
と、矢継ぎ早に私に話しかける。
そんなミランさんにボクシム先生が、
「ミラン、そんなに立て続けに実桜に話しても、実桜も答えられないであろう。やっとこの屋敷に戻ってきたのだ。これからゆっくりとここで実桜を療養させればよいことだ」
と、苦笑いを浮かべる。
「そ、そうですけど…。私はもう心配で心配で」
「ミラン、そなたの気持ちはよくわかっておる。実桜が無事に帰ってきたのだ。それでよいのだ」
「わかりました。実桜をしっかりとここで療養させます。あー、でもどうして実桜の身にはいつも波瀾なことばかり起こるのかしら。こんな若い娘なのに。神様も罪なものだわ」
「神様のせいではあるまい。今回のことも前回のことも、両方とも仕方のなかったことだ」
「そうかもしれませんけど」
「ミランさん、神様のせいとかじゃないです。たまたま運が悪かっただけです」
ボクシム先生とミランさんのやりとりに、私は左右に首を振りながらミランさんを見るものの、ミランさんは納得いかないような顔をしていた。
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