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「だけどおかしいんです。私が見たのはヨンウォン皇子様ともう1人女の人がいらっしゃったんですけど、そのことを後で皇子様に確認したら、皇子様は女の人とはいなくて、自分のお母様のお墓の前に1人でいらしたそうです」
「んっ? 皇子様は墓前にいた?」
「はい」
「では、実桜が見たのは皇子様と女人の2人だったが、皇子様は1人でファヨン王妃様の墓前にいたということか?」
「そうみたいです」
私はボクシム先生の顔を見てコクリと頷いた。
私が答えたあと、ボクシム先生は腕を組み、片手を顎にあて何かを考え始めた。
(ボクシム先生、急にこの国に来たときのことなんか聞いてどうしたんだろう?)
ボクシム先生の顔を見ながら様子を窺っていると、
「他には何か不思議なことはなかったかな?」
ボクシム先生が私に視線を向けてまた尋ねた。
「はい、特には…」
「わかった。実桜、ありがとう」
ボクシム先生はにっこりと微笑んで頷いた。
私は急にこんなことを尋ねてきたことを不思議に思い、ボクシム先生に質問をした。
「ボクシム先生、私がこの国に来たときのことで何かあるのですか?」
「いや、なんでもない。ただ少し気になることがあってな。ああそうだ、実桜。その女人だがそれは実桜の全く知らない女人なのか? このシンファの国で一度でも会ったことはあるか?」
「一度もお会いしたことはありません」
「何かその女人の特徴など覚えていないか?」
「いいえ。特には。可愛い女の人だったということだけで…。すみません」
「いやいや。気にすることはない。悪かったな」
「ほんとにすみません。あの時、初めて見た桜だったのでそっちの方に気を取られてしまって、それくらいしか覚えてないんです」
「初めて見た桜? そうか…。ちなみにそれはどんな桜だっだのじゃ?」
「はい。御衣黄という黄緑色の桜なんです」
「黄緑色の桜?」
ボクシム先生が眉間に皺をよせ、尋ねるように私の顔を見た。
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