繋がる証

3/12

4066人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
「だけどおかしいんです。私が見たのはヨンウォン皇子様ともう1人女の人がいらっしゃったんですけど、そのことを後で皇子様に確認したら、皇子様は女の人とはいなくて、自分のお母様のお墓の前に1人でいらしたそうです」 「んっ? 皇子様は墓前にいた?」 「はい」 「では、実桜が見たのは皇子様と女人の2人だったが、皇子様は1人でファヨン王妃様の墓前にいたということか?」 「そうみたいです」 私はボクシム先生の顔を見てコクリと頷いた。 私が答えたあと、ボクシム先生は腕を組み、片手を顎にあて何かを考え始めた。 (ボクシム先生、急にこの国に来たときのことなんか聞いてどうしたんだろう?) ボクシム先生の顔を見ながら様子を窺っていると、 「他には何か不思議なことはなかったかな?」 ボクシム先生が私に視線を向けてまた尋ねた。 「はい、特には…」 「わかった。実桜、ありがとう」 ボクシム先生はにっこりと微笑んで頷いた。 私は急にこんなことを尋ねてきたことを不思議に思い、ボクシム先生に質問をした。 「ボクシム先生、私がこの国に来たときのことで何かあるのですか?」 「いや、なんでもない。ただ少し気になることがあってな。ああそうだ、実桜。その女人だがそれは実桜の全く知らない女人なのか? このシンファの国で一度でも会ったことはあるか?」 「一度もお会いしたことはありません」 「何かその女人の特徴など覚えていないか?」 「いいえ。特には。可愛い女の人だったということだけで…。すみません」 「いやいや。気にすることはない。悪かったな」 「ほんとにすみません。あの時、初めて見た桜だったのでそっちの方に気を取られてしまって、それくらいしか覚えてないんです」 「初めて見た桜? そうか…。ちなみにそれはどんな桜だっだのじゃ?」 「はい。御衣黄という黄緑色の桜なんです」 「黄緑色の桜?」 ボクシム先生が眉間に皺をよせ、尋ねるように私の顔を見た。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4066人が本棚に入れています
本棚に追加