繋がる証

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部屋の中に入った瞬間、私はふぅーと大きく息を吐いた。 ボクシム先生やミランさんと一緒にいるときはそんなに疲れてはいないと思っていたものの、ひとりになってほっとしたのか、急に身体がだる重く感じてきた。 ストレッチをするようにグルリと首を回し、両手を上げて伸びをすると、身体からポキポキッと音がした。 それと同時に刀で切られた背中の傷がズキッと痛みを発した。 「あっ、痛っ…。背中の傷のこと、忘れてた…」 私は顔を歪めながら、痛さですぐに身体を動かすことができず、その痛みを抑えるように左手で右肩を掴んだ。 そしてそのままゆっくりとその場へ腰を下ろした。 ズキンと響く背中の痛みに必然的にヨンウォン皇子のことを思い出す。 (皇子様、今何してるんだろう?) (ちゃんとごはん食べたかな。 もう寝てるのかな) 王宮から戻ってきてからまだ半日しか過ぎていないというのに、皇子と一緒にいた時間が遠い昔のように感じる。 「実桜」 と甘く優しい声で呼んでくれる顔。 おいしそうに頬を緩ませながらごはんを食べている顔。 一緒に散歩をしながら麗しい笑顔で見つめてくれる顔。 何か思いついたときのいたずらっ子のようなニヤリと微笑む顔。 いろんな皇子の顔が浮かび上がってくる。 (皇子様に逢いたい…) 私は声にならないため息をつきながら、背中をかばうようにして布団の中へと入った。 布団に包まり意味もなく天井を見つめながら、屋敷に戻ってきてからボクシム先生やミランさんと話したことを思い出していた。 ボクシム先生に日本に帰りたいか? と聞かれたこと。 ヨンウォン皇子のことが好きなのか? と確認されたこと。 そしてミランさんの 『どうして実桜の身には波瀾なことばかり起こるの?』 と言う言葉。 日本に帰りたいのか? と聞かれて、すぐに返事ができない私がいた。
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