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日本に帰りたくないと言えば嘘になる。
だけど、このシンファの国に来た頃に比べて、その気持ちが少しずつ小さくなってきていることは確かだった。
それは。
ヨンウォン皇子がいるこのシンファの国から離れたくないと思う、もうひとりの私がいるからだ。
パパやママには会いたいけれど、もしここから帰ってしまったら、もう二度とヨンウォン皇子に逢うことができないかもしれない。
そう思うと、怖くて心から帰りたいと言えない自分がいた。
皇子とどうなるってわけじゃないけれど、今はまだ皇子のそばにいたい。
次に、皇子のことが好きなのか? と確認されたこと。
ボクシム先生はこの気持ちをヨンウォン皇子に伝えることも大切だと言っていた。
だけどこの気持ちを伝えていったいどうなるんだろう?
私はこの国の人間じゃないし、もしかしたらこのシンファの国に来た時と同じように、急にこの国から日本へ引き戻されてしまうかもしれない。
皇子とこのままずっと一緒にいれるわけじゃないってことも分かっているし、皇子は婚姻しないと言っているけれど、いつかは王宮の人たちが推薦する名家の女性と婚姻してしまうかもしれない。
そうなったら私、耐えることができるのかな?
そして最後にミランさんが言った「波瀾」という言葉。
その言葉を聞いて、私は桜守神社でひいた『波瀾』と書かれていたおみくじのことを思い出していた。
『あなたの心を乱す出会いがありそうです』
『思わぬ展開が二人を待っています。嵐の中で二人の気持ちが変わることがなければ大丈夫です』
心を乱す出会いとは、ヨンウォン皇子のことだったのだろうか?
思わぬ展開とは、皇子と出逢ってから牢屋に入れられたり、身体を痛めつけられたり、また身体を刀で切られたりしたことで、皇子との距離が少しずつ近づいていったことなのだろうか?
こんな大変な思いをしたけれど、皇子を好きだという気持ちが変わらなければ、もう少しだけ、皇子のそばにいてもいいということなのだろうか?
いろんな思いが頭の中でグルグルグルグルと回り続ける。
考えても考えても答えが出ないけれど、ただひとつだけ答えが出ているのは、ヨンウォン皇子を好きだという気持ちだけだった。
(皇子様のそばにいたい…)
私は頭の中にあるものを全て消し去るように、無理やりギュッと目を閉じた。
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