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ボクシムは、実桜と話をしてからいろいろと考え込んでいた。
実桜が見たのはヨンウォン皇子様と女人で、ヨンウォン皇子様は実桜しか見ていない。
実桜の話でおかしなところと言えばそれくらいだ。
あと気になるのは、ヨンウォン皇子様がファヨン王妃様の墓前にいたということだ。
ファヨン王妃様が言っていた女人とは、実桜の見た女人のことなのか。
実桜の見た女人とはいったい誰だろう。その女人を探すしかないのか。
ボクシムは最初、実桜が見た女人のことが気になった。
だが、実桜以外誰も見ていないため、その女人について探しようがなくどうすることもできなかった。
次に気になることと言えば、ヨンウォン皇子がファヨン王妃の墓前にいたということだ。
しかしこれも、ヨンウォン皇子が王妃の墓前にいたということだけで、手がかりになりそうなものは何ひとつなかった。
あとは実桜の話で気になることと言えば、御衣黄という黄緑色をした桜の花だ。
実桜は御衣黄という珍しい黄緑色をした桜の下でヨンウォン皇子と出逢った。
その桜には何の意味もないのかもしれないが、何も探しようがない以上、まずはその桜について調べてみようと考えた。
ボクシムは無駄足を踏むかもしれないと思いながらも、八方手を尽くし、花のことが書かれた書物をあらゆるところから取り寄せ始めた。
そして、時間が空くと書斎にこもり、その書物を手当たり次第に読んでいった。
今日もまたひとつ書物が届いた。
『花一覧』 と書かれたその書物を手にすると、ボクシムはすぐさま書斎に入り、机の前に腰を下ろした。
この書物で何冊目になるのだろう。
どれだけいろいろな花の書物を取り寄せても、御衣黄という桜についてのことは、何ひとつ書かれていなかった。
ボクシムは今回も徒労に終わるだろうと思いながら、表紙を捲った。
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